もやもやの気持聞いてよみずすまし   大平 睦子

もやもやの気持聞いてよみずすまし   大平 睦子 『この一句』  天衣無縫、心に浮かんだことをそのまま575にしたという感じである。それが絶妙の効果を発揮している。失礼ながら、表現技法を考えぬいた末に、こうした詠み方に落ち着いたものではなかろう。これはやはり自分の「今」をそのまま詠んだ、「つぶやき俳句」とでも言うべきものではなかろうか。この作者はこういった口語の「つぶやき俳句」で時々ホームランをかっ飛ばすのである。  「ミズスマシ」には二種類ある。主に東京周辺で言うミズスマシは黄金虫をうんと小さくしたような甲虫で、一心不乱という感じで水面に輪を描く。「まいまい」という別名を持つ。もう一つはアメンボとも呼ばれ、長い四本の中脚後脚を立て、オールを漕ぐようにすいすいと水面を歩行する。  どっちのミズスマシに語りかけているのだろうか。まいまいに語りかけても聞く耳持たずくるくる回るばかりだろう。とすると、仙人のような風情で水面に浮いているアメンボのミズスマシか。しかしこれとて反応は望み薄。しかし作者はつぶやくのが目的なのだから、聞こうが聞くまいが関係無いのだ。(水)

続きを読む