棚田までたらたら登る夏日かな   村田 佳代

棚田までたらたら登る夏日かな   村田 佳代 『この一句』  いかにも暑そうである。吉野にも飛鳥にも、あるいは長野県の姨捨にも、棚田は日本全国至るところにある。減反政策でかなりの棚田が耕作放棄され、ただの雑草の山になってしまったが、近ごろはその特殊な景観が観光地として人気を呼び、復活しているとも言う。  棚田は山裾の方から見上げるのも悪くはないが、山のてっぺんに登って見下ろすと一段と興趣が増す。複雑な形の大小の田んぼが、山襞の微妙な曲線に沿って段々と末広がりに続いている。しかし、その景観を楽しむにはきつい登りを覚悟せねばならない。  この句は田植が終わってしばらくして青田になった頃合いであろうか。ちょうど今頃の、梅雨の晴れ間といった暑い日なのだろう。胸突き八丁というわけではない、昇り始めは別に大した坂ではないと思っていたら豈図らんや、たちまち息がせわしなくなった。「たらたら登る」という表現が効果的だ。しかしこの作者は、「参ったまいった」と言いながら、結構楽しげな様子である。(水)

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