ウズベクの人の優しさ桑の花      井上 啓一

ウズベクの人の優しさ桑の花      井上 啓一 『季のことば』  「ウズベク」はウズベキスタンの旧称。作者は最近、この地を旅行してきて、「すばらしかった」と語っている。風光や文化遺産はもちろんだが、何より人々が友好的で優しかったという。アフガニスタンが南隣りで、政情はやや不安定。しかし治安は問題なく、大いに旅を楽しんでこられたようである。  西安からローマへの交易路のちょうど中央にあたり、さまざまな民族の混血が行われた地域でもある。人種の混合が優しい人々を生むのだとすれば、人類の未来に明るい光が見えてくる。そこで「桑の花」・・・。見たことがないのでネットで調べたら「これ、花?」と言いたくなるような地味な風情であった。  歳時記には「淡黄緑色の小花の房」とある。この房がすぐに黒紫の「桑の実」(夏の季語)に変わって行くのだろう。問題は「桑の花」が春の季語であることだ。作者はもちろんそのこと知っていて、六月の句会に出してきた。現実に桑の花が咲いていた、ということもあるが、地味な花こそウズベク人の優しさに似合う、と思ったからではないだろうか。「桑の花は、この句に実に相応しい」というコメントもあった。(恂)

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