花冷えの過ぎれば早も走り梅雨   藤村 詠悟

花冷えの過ぎれば早も走り梅雨   藤村 詠悟 『季のことば』  五月から六月はじめ、梅雨はまだ先だと思っていたのに、二三日ぐずついた天気が続き、時折しとしと降って来る。これが「走り梅雨」で初夏の季語。  八十八夜の茶摘みの話題や薫風のゴールデンウイークと、すかっとしたイメージの初夏にこの天気では「冗談じゃねーぞ、もう梅雨かよ」と愚痴りたくもなる。それと同時に、ついこないだ夜桜見物に出かけたばかりなのに、早くも梅雨が近づいているんだなあと、季節の移り変わりの早さに気づかされる。そういう気分を帯びた季語である。  とりわけ退職して気ままな暮らしをするようになった年齢には、季節の移り変わりの早さが気になる。さしたる事をしているわけではないから、昨日も一昨日も先おとといも、同じような日々がただ繋がっている。そしていつの間にか一週間たち十日たつ。而うしてある日「早も走り梅雨」と気づく。  そういうずんべらぼうの日常に、季語の歌である俳句はアクセントをつけてくれる。(水)

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