柿若葉わが子の腕の太さかな   和泉田 守

柿若葉わが子の腕の太さかな   和泉田 守 『この一句』  初夏なのに夏真っ盛りのような陽差し。柿若葉が陽光を照り返している。庭に出て美味い空気を胸一杯に吸い込む。このところぐんぐん背が伸びてきた息子がタンクトップ姿で出て来た。突然、その太い腕が大写しになって目に飛び込んできた。ぎょっとするような太さであり、我が子ながら眩しいものを見るような感じにもなる。そうか、いつの間にか一人前の男になったんだなと覚る。  父と子は、息子にせよ娘にせよ幼児期を脱すると、だんだんと距離を置くようになっていく。ほとんどの動物は子が生まれても父親は素知らぬ顔だから、人間はまだましな方とも言えるが、とにかく子どもたちからすれば「お父さん」はなんとなく居るものという感じになる。父親も子どものことは妻に任せっぱなしで、接触が薄くなる。だからと言って、子どもたちのことを忘れることなどあり得ない。常に心の裡にあるのだが、日々刻々挙動を気にするといったことが無くなるだけである。  そこで、時折こうした情景が現れる。季語「柿若葉」と実にうまく合った句だ。(水)

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