澄み渡る空のしじまや花大根       岡本 崇

澄み渡る空のしじまや花大根       岡本 崇     『季のことば』  句の花大根は諸葛菜、オオアラセイトウ、ムラサキハハナの別名を持つ帰化植物(原産地中国)を指すのだろう。線路の脇や土手などに咲く紫色の花は、すでにお馴染みの存在。日本には江戸時代に到来したとされるが、ある人が第二次大戦後、日本各地に咲かせようと種を播いて歩いた、という話もある。  帰化植物が日本に到来すると、在来種と競合を続けるらしい。例えばセイタカアワダチソウは当初、在来のススキを圧倒したが、今ではススキが失地を回復している。花大根もある時期、大いに目立つ存在になったが、その後、退潮。いまでは適当な範囲を固め、日本の花になりつつあるように見える。  この句、作者は土手に腰を下ろし、足元の花大根を見つめていたのではないだろうか。ふと目を上に転じると空は澄み渡っている。空の青さと地の紫。その間に大きな静寂が広がっていたのだ。当欄の前句、足下に揺らぐカタクリの花を思わざるをえない。紫の花は静かさが似合うようである。(恂)

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