菜花漬け息災を問ふメモ添へて   山口 斗詩子

菜花漬け息災を問ふメモ添へて   山口 斗詩子 『季のことば』  小松菜、山東菜、しゃくし菜、水菜(京菜)、壬生菜などアブラナ科の「菜っ葉」は、暮れから春にかけて「お浸し」「鍋物」「漬け物」などになって食卓を賑わしてくれる。それが四月の声を聞く頃、株の真ん中から太い茎を伸ばし、次々と「菜の花」を咲かせる。放って置くと細長い莢になり、その中に仁丹粒くらいの真っ黒な「菜種」がたくさん出来る。昔はこれを絞って菜種油を採り、食用や灯油として用いた。しかし照明用としての役目は無くなり、食用油の原料としては大豆やオリーブにその地位を奪われ、今や菜の花は観賞用に存在感を示すだけという塩梅である。  ただ「菜花漬け」だけは非常に人気が高まっている。二月末頃から盛んに菜の花を咲かせる種類を栽培し、咲く寸前の蕾を塩漬けにする。いかにも「春が来ました」という清々しい漬け物が出来る。足が速いからすぐに食べてしまわないとダメになってしまうところも、うつろいやすい春らしさだ。  独り住まいのお年寄りに「菜花漬け」が届けられた。「おばあちゃん、お元気ですか」なんてメモが添えられている。ほのぼのとした温もりが漂う。(水)

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