春の日や辞令一本西へ行く       野田 冷峰

春の日や辞令一本西へ行く       野田 冷峰 『合評会から』(酔吟会) 二堂 勤め人はみな、辞令一本でどこへでも行かなければならない。春はこういう季節なんですね。 正裕 そう、サラリーマンの人生劇場です。こういうこと誰にも起こりうる。身につまされました。 春陽子 春の日と転勤という取り合わせの措辞に納得した。梅の香りがすっと漂ってくる、という感じもあって・・・。 百子 「北へ」ならかなりの雰囲気ですが、春、西へ、は柔らかな感じです。仕方がないなぁ、くらいでしょうか。 岡田 この句、「北へ」がいいのでは、と思います。春に背いて、というのが、転勤に伴う私の実感なんですよ。 反平 「北へ」の辞令を貰ったことのある私の思いを言えば、「春浅し」がいいな。 冷峰(作者) これ、私の知人なんですが。この人に「東風吹きて夢の残りの一人旅」という句も贈りました。「春の日」には、今までよくがんばったねぇ、というねぎらい気持ちも込めています。              *            *  「春の日に」「西へ」ねぇ? と首をひねった。左遷でも栄転でもなさそうである。作者のコメントを聞いて、事情が分かってきた。これは「挨拶・存問の句」なのだ。俳諧の伝統、今なお、ここに生きていた。(恂)

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