菜の花の淡く盛りを過ぎにけり     広上 正市

菜の花の淡く盛りを過ぎにけり     広上 正市 『この一句』  菜の花は黄色と相場が決まっていて、いつまでもあの鮮やかな色を保っているとばかり思い込んでいた。しかし盛者必衰の理というものがある。衰える時期が来れば、全体の力が失せてゆき、花の色も当然、褪せていくはずだ。この句によって、当たり前のことを教えられ、なるほどなぁ、と頷いている。  蕪村の「月は東に日は西に」の句のためだろうか、菜の花を思うと、頭の中に一面の黄色い畑が広がって行く。しかし菜種油を取る畑はいま、非常に少なくなっているようで、掲句の場合は広大な菜の花畑ではなさそうである。畑の隅や土手の雑草の中の菜の花を想像したらいいのだろうか。  濠端の菜の花がいつの間にか細長い鞘をつけていたのを見たことがあった。中に小粒の種が入っているのだろうと思ったが、そこに至るまでの花の色の変化に気づくはずもなかった。褪せた花の色を見て「盛りを過ぎた」と覚るのも俳句の心。しかしその花をずっと見続ける人でなければ、こういう句は作れない。(恂)

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