畝傍から香具山目指し青き踏む   大下 綾子

畝傍から香具山目指し青き踏む   大下 綾子 『この一句』  句会でこの句に出会った時、まさに「青き踏む」の原点を詠んでくれたと嬉しくなって採った。飛鳥の春は実に美しい。盆地一帯に若草萌え立ち、紫雲英はじめ野の花が咲き乱れ、木々の新芽が芽吹く。その中に畝傍(うねび)、香具(かぐ)、耳成(みみなし)の大和三山がのんびりとうずくまり、寝そべっている。どこからともなく囀りが聞こえて来る。「あかねさす紫草野行き標野行き野守は見ずや君が袖ふる」額田王がこう歌った情景が、まるで昨日のことのように浮かび上がってくるのが飛鳥である。  畝傍山は橿原神宮、神武天皇陵がある所で、香具山はそこから北東方向5、6キロくらいだろうか。途中いくつか殺風景な町並があるけれど、概ねは万葉人になったような気分で歩ける。「香具山は畝火ををしと耳成と相あらそひき 神代よりかくにあるらし いにしへもしかなれこそ うつせみも妻をあらそふらしき」弟大海人皇子(後の天武天皇)の妻額田王を奪った中大兄皇子(天智天皇)の歌を口ずさみ、古代ロマンに浸っている。(水)

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