着飾りて春陽の笑顔老婦人       大平 睦子

着飾りて春陽の笑顔老婦人       大平 睦子 『この一句』  季語の「春日」(はるひ、しゅんじつ)には、「春の一日」と「春の日光」という二つの意味がある。全く違うものを一つの季語とするのは理屈に合わないが、まぁ、いいじゃないか、と丸く収めてしまうのが俳句の俳句たるところ。この句は、間違いのないように「春陽(はるひ)」と表記し、光であることを示した。  作者によると、地下鉄内で出会った情景である。三人の老婦人が乗ってきたので席を譲り、いい雰囲気が生まれたらしい。「本当におしゃれな方たちで、春の陽のような明るさ、暖かさを感じた」そうである。「華やかですね」と話しかけたら、「華やかですって」と大喜び。青山三丁目で降りられたという。  かつて「婦人」という語を拒否する風潮があった。「婦」は箒を持つ女を表し、家庭に閉じ込もる女性の象徴になるからだという。しかし「婦人」の持つムードは捨て難く、特にご高齢の場合、老女、老女性はどうも頂けない。「着飾りて」「春陽の笑顔」とくれば、やはり「老婦人」でなければ、と私は思う。(恂)

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