スカートの裾のスミレが踊りだす   渡辺 信

スカートの裾のスミレが踊りだす   渡辺  信 『この一句』  面白い句である。ふわーっと広がるフレアスカートか、裾がゆったりしたプリーツスカートでもいい、春らしい軽い布地のスカートの裾にスミレの模様がプリントされているのだろう。それをはいた若い娘が歩くにつれて菫の花が踊り出すというのである。いかにもウキウキした感じがする。  ところが昔から、「絵に描いたものは季語にならず」ということが言われている。桜の花を描いた絵や、紅葉の屏風などは生きておらず、一年中あるものだから、そういうものを題材に詠んでも季節感が伝わって来ない。従って季語とは認められないというのである。その点で言えば、この句もスカートに描かれたスミレだから季語の役割は務まらないことになる。  しかし、この句を読んでいると、やはり春の句だなあと思う。「裾のスミレが踊りだす」という詠み方が実に軽快で、春を感じさせるのだ。確かにこれは自然に咲いているスミレではないが、立派に季節を伝える働きをしている。それに第一、ファッションにうるさい若い娘が、冬や夏や秋にスミレ模様のスカートなぞはくわけがないのである。(水)

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