男坂押してくれたる春はやて     田村 豊生

男坂押してくれたる春はやて     田村 豊生 『合評会から』(三四郎句会) 恂之介 神社か寺への上り坂ですね。左右に急な男坂と緩やかな女坂があって、これはきつい方の坂です。 敦子 普通なら大変な坂ですが、強い風のお蔭で登っていけた。句には感謝の念が感じられます。 尚弘 男坂だから、男が登っているのかな。風が人の体を押してくれるほど強かったんだ。 信 息を弾ませて上るような急坂でしょう。風の力を借りて登って行くことが、よく分かります。 進 しかしこの風、暖かいのか、冷たいのか。冷たいけれど、助けてくれた、という感じがする。 豊生(作者) 八十の坂を越すと、足も腰も痛いですよ。しかし後ろから、ふっと風が押してくれた。風への「有難い」という気持ちを込めています。              *              *  子規が「月並句」を批判して挙げた特徴の一つに「擬人法」がある。動植物、自然など、いろいろなものを人間に当てはめて表現する手法だ。この句の「(風が)押してくれたる」も一例だが、「場合によってOK」と考えるべきだろう。ちょうどこの時期の「山笑ふ」のような擬人法の季語もある。(恂)

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