風花や頬に一ひらとけにけり     石黒 賢一

風花や頬に一ひらとけにけり     石黒 賢一 『季のことば』  「風花」とは、晴天なのにちらちらと舞い降りてくる雪のこと。東京ならば埼玉県や群馬県あたりに降った雪が風に乗ってくるのだろう。空を見上げると、キラキラと輝いていることがある。顔に触れて「オヤ」と気づくこともある。「雪だな」と思って目で追っても、すぐに見えなくなってしまう。  晩冬の季語ではあるが、むしろ立春の後に出会うことが多いような気がする。掲句は二月半ば過ぎの句会に出され、「春」ばかりの作品中に並んでいても違和感はなかった。私はその日、句会に出るために街を歩いている時、風花に出会っていたのだ。このところ特に、このはかなげな雪を見ることが多いと思う。  風花という語感はたおやかで美しく、多くの句はそのイメージに沿うように柔らかに表現されている。この句、「一ひらとけにけり」と後半に仮名を並べたのは、その意識によるものだろう。「消えにけり」としたらどうか、とも考えたが、「とけにけり」でよさそうだ。作者の頬には水が残っていたに違いない。(恂)

続きを読む