文鳥の孵化せぬ卵二月尽く   星川 佳子

文鳥の孵化せぬ卵二月尽く   星川 佳子 『季のことば』  この句は「二月尽」などと言わずに、平明に「二月尽く」と詠んだところが良かった。というのも、近ごろはどの月にも「尽」をつけて、したり顔の俳句が多く、うんざりさせられているからである。  月名に「尽」をつけて、「ああこの月も終わってしまうのだなあ」という詠嘆を籠め、過ぎゆく季節を惜しむ詠み方は俳諧時代からの伝統である。しかしそれには分というものがある。「尽」をつけてなるほどと思わせる月は、四季の移り変わりの月である。春が尽きんとする旧暦三月と、秋が果てる旧暦九月が「尽」を付けるに最もふさわしい。弥生尽、三月尽、九月尽ということになる。これを現代の暦に直した「四月尽」と「十月尽」もまずは頷ける。これ以外の月にわざわざ古風な「尽」をつけて勿体ぶるのはどうかと思う。それよりは「尽く」「果てる」「果つ」「ゆく」などとした方が素直で感じがいい。  この句、文鳥が抱卵し始めたのだが、どうしても孵らないと詠んでいる。春が兆したとは言ってもまだまだ寒い、二月末の気分をよく伝えている。(水)

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