立春や鬼の足跡山に消ゆ   後藤 尚弘

立春や鬼の足跡山に消ゆ   後藤 尚弘 『季のことば』  今年平成二十七年一月一日は旧暦ではまだ十一月十一日で、旧暦の元日(中国は現在もこの日を「春節」と呼んで祝う)は立春から半月も過ぎた二月十九日であった。つまり、今年は「年のうちに春は来にけりこの春を去年とやいはん今年とやいはん」の歌が当てはまる年なのだ。今日二月二十三日は旧暦ではようやく三が日が明けて屠蘇気分を振り払う一月五日である。  「立春」は寒さの極まる頃合いであり、東京でも雪が降ったり氷が張ったりする。それでも立春と聞くと、暦などに縁の無い若者たちまで、はしゃぎ顔になったりする。  この句、都会の住宅密集地では珍しくなった豆撒きがまだ盛んな地方か、里山を間近にした郊外住宅地ででもあろうか。昨夜の鬼打ち豆がまだ庭先に転がっている。その先へ視線をずらして行くと・・・なんと霜どけの道に大きな足跡のようなものが山の方へと続いている。  「お父さんの元気のいい掛け声で豆をぶつけられた鬼が逃げて行ったのよ」立春のうららかな陽差しの中で、母子が楽しげに喋っている。(水)

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