ご近所を驚かしたる鬼やらひ      大澤 水牛

ご近所を驚かしたる鬼やらひ      大澤 水牛 『季のことば』  この句を見て、何十年も前の節分を思い出した。我が家の向かいのご主人が夕暮れになるともの凄い声を張り上げ、豆まきを始めるのだ。まずドアや窓を開け放ち、「福は内、福は内」と、やや大きめの声で福の神を招来する。続いて割れ鐘のような「鬼は~外」の声が隣近所に響き渡るのである。  すると我が家では、母が「お向かいで始まったよ」と子供たちを促がし、隣近所からも次々に「鬼は外」の声が響いてくる。しかし今はもう、あのような迫力のある鬼やらいの声は聞こえなくなった。お向かいが引っ越してからのことだが、どの家もご近所の迷惑を考え、小声でやっているらしい。  というわけで、この句は昔のことか、と思ったが、作者自身が大声を出しているそうで、大人物ここにあり、と大いに愉快になった。ただし奥様から「小さな声で」懇請されているそうで、先々どうなっていくのか。私の場合、廊下などにパラパラと豆をまいただけ。なるべく外に聞こえないように、と思ってしまうのだ。(恂)

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