春めくや京の和菓子の薄緑   井上 啓一

春めくや京の和菓子の薄緑   井上 啓一 『合評会から』(番町喜楽会) 春陽子 京都の菓子をよく見ているなあと思いました。季節ごとに彩りなど微妙に変化させているんですよね。 正裕 うぐいす餅でしょうかね。春めく感じがします。しかしこれ「和菓子は」とした方が、京都へ来た感じが伝わってきていいかなと思いましたが。 百子 京都の生菓子は季節の新作が次々と出ます。お茶をいただきながら季節の和菓子。それが薄緑色だった。なんだか心のゆとりを感じさせる句です。           *     *     *  京都は公家と社寺の世界。行事やら儀式に菓子と茶はつきもので、平安室町時代からあれこれ工夫が凝らされ、上品で優美な菓子が生まれた。この句の京菓子は「細工菓子」とも呼ばれる上生菓子であろう。季節感を盛り込み、色、形、香りをとことん追求し、それぞれに奥床しい「銘」がついている。  眼、鼻、舌はもとより、その菓子の由緒を聴いて理解する耳まで使うというのだから、ただむしゃむしゃ食えばいいというものではない。がさつな東男は京の春には心して臨まねばならぬ。(水)

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