古民家の温もりやはり隙間風    吉田 正義

古民家の温もりやはり隙間風    吉田 正義 『季のことば』  隙間風は案外、新しい季語であるようだ。手元の歳時記や大辞典などに江戸時代の作例はなく、明治・大正以降の句を僅かに見かける程度である。その昔、隙間風は俳句に詠むに値しないほどの風だったが、近代的な家が増えて以降、季語として認められるようになったのかも知れない。  そしてさらに一転、今日の隙間風はほぼ完全に過去のものになってしまった。家造りに気密性が欠かせず、窓や戸をきちんと締めれば隙間がないのだから、隙間風も有り得ない。若い人はこの風を知らず、戦後の貧しい時代を過ごした人だけが、あの頃の風として思い出すくらいのものだろう。  しかし隙間風はまだ生きていた、と句の作者は言う。田舎で売り出し中の古民家などに行った時の体験だろうか。温もりのある古民家、などと言われるが、その場に居ると、やはり隙間風が吹いてきた。懐かしいような、逃げたいような、昔のいじめっ子に出会ったような気持ちになったのではないだろうか。(恂)

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