信濃川ゆつたり動く枯野かな    井上 啓一

信濃川ゆつたり動く枯野かな    井上 啓一 『この一句』  長野県(信濃)を流れる千曲川は面白いことに、新潟(越後)に入ると信濃川と名を変える。日本一長い川として知られ、中流域の十日町盆地を行く頃には早くも大河の雰囲気を漂わせる。この句は「ゆつたり動く」という表現に工夫の跡が見え、新潟の枯野風景を大きく捉えて魅力的だ。  句会の選句用紙では偶然、隣に「一筋の流れ横たへ大枯野」(玉田春陽子)という句が並んだ。似た趣向の句で、こちらも悪くない。選句では点が別れ、目出度く「ほぼ引き分け」となる。合評会は固有名詞(信濃川)のあるなし論に話が及ぶなど賑やかで、二句の対決がさらに続くことになった。  後日、二人の作者が参加する連句の会で「両句を発句にしたら」という面白半分の提案が賛同を得た。詳しいことは省くが、二つの連句を同時進行させ、出席者はそれぞれ双方に参加するという試みだ。さて両句に続く「七七」を、あなたはどう詠むか。俳句の奥にある連句の世界の入口である。(恂)

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