母と子の小さき歩みや暮早し   水口 弥生

母と子の小さき歩みや暮早し   水口 弥生 『季のことば』  「暮早し」は「短日」という季語の傍題で、冬になるとあっという間に日が暮れる様子を表す。一年中で最も日が短いのは冬至で、この頃の東京近辺は夜明けから日没までが約九時間四十五分しかない。夜が十四時間十五分と圧倒的に長い。  しかし、「夜長」は秋の季語とされている。「短日(暮早し)」が冬の季語で、それを裏返しただけの「夜長」が秋の季語というのはおかしな話だが、これが俳句の面白さとでも言おうか。「ものの感じ」が先立つのである。激しい夏が過ぎ、あっという間に夜が明けてしまった頃と比べると、ずいぶん夜明けが遅く日没が早くなったなあと感じる。この「初めて感じる」さまを尊んで、「夜長」は秋のもの、「暮早し」は冬のものと決まった。  この句、若いお母さんが勤め帰りに保育所で我が子を迎え、我が家へ戻るところだろうか。勤務形態をちょっと変えてもらって早目に退出するのだが、五時過ぎではもうとっぷりと暮れている。小っちゃな手を握りしめて急ぎ足で歩くと、少し汗ばんでくる。「小さき歩み」が実にいい。(水)

続きを読む