木枯らしの勢ひ借りて古書整理   大平 睦子

木枯らしの勢ひ借りて古書整理   大平 睦子 『この一句』  木枯らしにはこういう効用もあるんだなと面白味を感じ、またこういう詠み方をしたことにもすこぶる感心した。  「木枯」は冬の初めに吹くかなり強い北西風で、本格的な冬の訪れを告げ、厳しい季節に対する心構えを迫る。そういう趣の季語だからであろう、俳句では「木枯」の句は厳しく粛然たる感じのものが多い。「凩の果はありけり海の音 言水」「木枯に岩吹きとがる杉間かな 芭蕉」「こがらしに二日の月の吹きちるか 荷兮」など古句にはそういうものが多い。現代俳句でも「海に出て木枯帰るところなし 山口誓子」「凩の中に灯りぬ閻魔堂 川端茅舎」「凩や焦土の金庫吹き鳴らす 加藤楸邨」という具合である。  ところがこの句はどうだ。木枯らしの中で古本の整理だと言う。古い本はなかなか捨てられない。もう何年も読んでいないのだから、これから先も読むことはないだろうと思いつつも捨てられない。身も心も縮こまる木枯らしに、えいやっと立ち上がった拍子に思い切るのが一番かも知れない。異色の「木枯句」である。(水)

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