均されし土黒々と初時雨   廣上 正市

均されし土黒々と初時雨   廣上 正市 『季のことば』  十一月初旬、正月用の菜っ葉などを蒔くためであろうか、畑が丁寧に耕され、幅広の畝が立てられて種蒔きの準備がすっかり整った。そこにぱらぱらと雨。ならされた土は水分を吸収するやたちまち黒々と、いかにも柔らかそうな色合いになる。と思うと雨は間もなく通り過ぎ、弱い陽差しが戻って来る。これが時雨。和歌以来連綿と受け継がれてきた伝統的な初冬の季語である。  木々の葉に薄黄色やほんのりと赤味が差し、地面の草はすっかり枯れている。時折、遠くから渡って来たのであろう小鳥の声がするだけで、まさに静寂という言葉がぴったりくる。  「均されし土」という言葉が、雑踏喧噪の大都会に住む人達の多い句会ではすぐには浸透しなかったせいか、この句には思ったほどの点が入らなかった。しかし、しみじみとして、初時雨の気分を十分に伝えてくれる佳句である。「初時雨猿も小蓑をほしげなり」と詠んだ芭蕉には、「しぐるるや田のあらかぶの黒む程」という句もある。刈り取られたばかりの田圃の稲の切株がちょっと黒ずむ程の時雨である。掲出句はこの句に通い合う味わいがある。(水)

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