満天に星明りして音もなし     後藤 尚弘

満天に星明りして音もなし     後藤 尚弘 『季のことば』  「星明り」は星の光だけで十分に明るい夜空のこと。月はなくても月夜のように明るい星空を表す「星月夜」とほぼ同義と言えるだろう。歳時記では「秋の星」や「星月夜」の傍題としているものもあり、季語としての立場は定まっていないようだが、その意味するところは明らかである。  この句はもちろん、晴れ渡った夜空を詠んでいる。月は出ていないが、夜空の隅々まで星の光が及び、いつもとは違う、ぼんやりとした明るさに満たされているのだ。「音もなし」がこの句の眼目だが、具体的にどんな状況なのか。周囲に物音が絶えて、「星の呟き」さえも聞こえてこないのだろう。  ヨーゼフ・シュトラウス作曲の「天体の音楽」という結構賑やかなワルツがある。星などの天体の運行を音に表わしているとされ、「なるほど」と頷かせられるものがあるが、ちょっとしっくりこない面もある。日本人として、俳句を好む者としては、やはり「音もなし」の方がいいなぁ、と思うのである。(恂)

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