落日の尾瀬輝けり草紅葉       野田 冷峰

落日の尾瀬輝けり草紅葉       野田 冷峰 『季のことば』  四十年も前になるだろうか。晩秋の尾瀬を訪れ、草紅葉の素晴らしさに目を見張ったことがある。やはり落日の時刻であった。尾瀬ヶ原の見渡す限りが黄金色に輝いていた。同行の一人が「水芭蕉に感激しているようでは尾瀬の素人だなぁ」と語り、みんなが「そうだ、そうだ」と同調した。  何日か後に仲間が顔を合わせた時、草紅葉のことが話題になった。「ススキではなかった」という言葉はあったが、草の名は誰も知らない。パソコンが普及するずっと前のことである。一人が「尾瀬の植物」というような図鑑で調べたところ、載っているのは花ばかりで、草のことは分らなかったという。  この句によって「あの草」を思い出した。早速インターネットで「尾瀬の植物」を検索したら、出てくる写真はやはり花ばかり。一つ「これかな」と思われるのがワタスゲ(綿菅)だが、細長い茎の先端に白い綿帽子を付けていた。花が落ちて「名もなき雑草」と化した草が、尾瀬の秋を彩っているのだろう。(恂)

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