海の果て見つめる猫の影長し   藤野 十三妹

海の果て見つめる猫の影長し   藤野 十三妹 『季のことば』  ご主人の帰るのをじっと待ち続け、改札口の方向を見つめているのは忠犬ハチ公。猫はそんなサービスはしてくれない。ご主人なんか餌もらう時以外は関係無い、もっぱら自分の気になる方角や物事をじっと見据えるだけである。この「見つめる」という動作は、犬よりもむしろ猫の方が得意というか、猫には元々そういう癖があるようだ。  我が家のチビもひまさえあれば書斎の出窓に座ってじいっと外を見つめている。TVコマーシャルの「窓猫」そのもので、外の石段を通りかかる娘さん達が気付いて「カワイーッ」なんて立ち止まったりするが、チビは別にそう言ってもらいたくてそうしているわけではないようだ。知らんぷりしている。この句の猫はたぶん海に思い入れがあって、何かというと海を見てるのだろう。  句会で見た瞬間いい句だなと思ったのだが、季語が無いので取るのを止めた。しかし、「影長し」は晩秋から冬にかけての季語として十分資格がある。寂寥感漂い、抒情味豊かではないか。「夜長・長き夜」(秋の季語)、「短日・暮れ早し」(冬)ともなれば、背をそらせ遠くを見つめる猫の影もぐんと長くなる。(水)

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