墓参り親父の好きな稲荷鮨   加藤 明男

墓参り親父の好きな稲荷鮨   加藤 明男 『この一句』  これはとても分かりやすい墓参句である。墓を洗い、花を供え、線香をくゆらせ、父親の好きだった稲荷寿司を上げて、家族そろって手を合わせる。春と秋と、それにお盆と、見慣れた光景である。  都会住まいの家庭では墓地がかなり離れた郊外にあることが多い。ましてや墓が故郷にある家ともなれば尚更で、墓参は年に一度が精一杯ということにもなる。故人の好物を供えるにも感慨一入ということになろう。  秋彼岸の頃の、暑くもなく寒くもなく、抜けるような青空に爽やかな風が吹き抜ける中での墓参は、オジイチャン、オバアチャンの思い出話などをしながら、一家団欒のなごやかな空気が醸される。ご先祖もきっと喜んでくれているに違いない。  稲荷寿司という庶民的な食べ物を出したところが、湿っぽくなりがちな墓参句を明るい感じにしている。(水)

続きを読む