その背中義父さんみたい墓洗ふ   池村 実千代

その背中義父さんみたい墓洗ふ   池村 実千代 『この一句』  墓参の情景がありありと浮かんで来て、琴瑟相和す実年夫婦の様子もよく分かる。墓を洗っている夫の後ろ姿が、墓石の下に入っている舅によく似てきたなあと、思わず笑っちゃったのだ。子育ても終わり、孫ももうずいぶん大きくなった。夫婦ともここまで無事に過ごして来られたのも天の恵み、ご先祖様のお蔭と、秋彼岸の日射しの下で幸せな気持になっている。それが日常会話のような「その背中義父さんみたい」によく現れている。  普段の喋り言葉をそのまま用いると、生き生きとした感じが出るが、いつも成功するとは限らない。しばしば軽佻浮薄、嫌味臭味が鼻につくものになってしまう。機知に富んだ、軽妙な句は、十分に言葉を選び、言い回しを熟考することが必要であり、同時に「言い過ぎない」ようにすることが肝心だ。  この句はその点、素直で全く嫌味がない。恐らく、実際にそう感じたことをそのまま句にしたのだろう。ツクリモノには無い強さである。(水)

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