靴底に八月の熱感じつつ     石黒 賢一

靴底に八月の熱感じつつ     石黒 賢一 『季のことば』  八月の末は夏と秋の端境期である。テレビやラジオをアナウンサーはこのところずっと「もうすぐ秋なのですですが」と夏の暑さを嘆いていた。ところが俳句をやっている人はちょっと違う。「暦の上ではもう秋なのに」と思いながら、訪れつつある秋の気配を敏感に感じ取っているはずだ。  私(筆者)はいつもスニーカーのような底の厚い靴を履いている。だから靴の中の全体が熱く、この句を見たときは「足裏に靴底の熱を感じるものだろうか」と思った。しかし句の作者が分かって了解した。この人は仲間内で知られたお洒落で、底の薄い、高価そうな靴を愛用している。  そうだろう、と頷いた。あのような靴なら、アスファルト道路の炎熱をストレートに感じるに違いない。句は「感じつつ」で終わっている。熱いなぁ、まだ真夏のようだ、と詠みつつ、季節の変わり目を暗示しているのだ。句会から十日ほど経った。薄い靴底はもう、秋の到来を伝えているのだろう。(恂)

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