人情の薄き地下鉄サングラス   岡田 臣弘

人情の薄き地下鉄サングラス   岡田 臣弘 『この一句』  JRだって近郊私鉄電車だって乗客同士のつながりなどほとんど無いのだが、地下鉄となると都心の交通機関だけに一層無機質な、単なる「足」という感じで、義理も人情もあらばこそといった塩梅である。近くの人に下手に言葉をかけたり、微笑みを見せたりすると、あらぬ誤解を生む恐れがあるから、隣との間に見えぬ仕切りをこしらえるかのように、身体を硬くしている人が多い。  この句はなんと地下鉄に乗ってもサングラスをかけている妙な人である。だからと言ってこの人物は暴力団風のコワモテ男ではなく、ごく普通の人、それもかなりお洒落な女性なのではないか。意識してつんとしているのではなく、周りから隔絶するような生き方が身についてしまっているようなのだ。サングラスもこの人にとっては眩しい陽光を遮るためのものではなく、自分と人とを仕切る道具になっているのだろう。東京沙漠には理知的で美人でお金がありそうで、にもかかわらず幸せではないような感じの人が目につく。  そうした鉱物質の都会の雰囲気を、あくまでも叙情的にうたった佳句。(水)

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