窓枠に天下窺ふ青蛙   堤 てる夫

窓枠に天下窺ふ青蛙   堤 てる夫 『季のことば』  体長四、五センチの鮮やかな緑色の蛙。瞼が金色で黒目がぱっちりして可愛らしい。五、六月が繁殖期で、田圃などでオスが「コロロ、コロロ」と高い澄んだ声でメスを呼ぶ。畦道の草や土のくぼみなどに泡をいっぱい噴き出し、その中に卵をたくさん産む。やがて泡の中で孵ったオタマジャクシは田圃の水に落ちて自前で生きて行く。  窓枠にぴたっと貼り付いてあたりを睨み廻している青蛙は、恐らく灯りを目がけてやって来る昆虫類を捕食しようとしているのだろう。青蛙にとってはこの窓が自分の大事な領土の一つ。日が暮れるとここに陣取って、天下の形勢をうかがいながら、よき獲物ござんなれというところ。  昭和四〇年代までは東京都内でも小川や池、田圃などに近い住宅地ではよく見かけた。しかし川や池は埋め立てられ、コンクリート護岸になり、人間様の住みやすい町になるにつれ青蛙は姿を消した。作者はすっかり忘れていたこの小動物に巡り会い、感激したのだろう。「窓枠に天下窺ふ」という実に面白い五・七でアオガエルに声援を送っている。(水)

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