段丘に夕陽見送る柿の花   河村 有弘

段丘に夕陽見送る柿の花   河村 有弘 『合評会から』(三四郎句会) 論 きれいな句ですね。夕陽の赤と柿の花の白。キャンバスを見ているような写実。 恂之介 段丘という言葉は珍しいが、河とか海などにある段々の丘ですね。夕陽と柿の花が合っています。           *     *     *  日本は列島の真ん中を山脈が走り、湧き出し流れ下る水が両側の山肌を削り土砂を押し流し、何万年も何百万年もかかって沖積平野を作り、その中を流れる川がまた左右を削り、という具合で処々方々に「段丘」が出来た。東京の山の手はほぼ全域が多摩川と荒川が作った武蔵野台地で、その周囲は崖となり段丘になっている。その崖っぷちには雑木にまじり、大きな柿の木が生えていた。宅地化が進んでほとんど伐られてしまったが、まだ郊外には残っている。  そういう段丘上の柿の木と夕陽といえば、先ずは朱色の実をつけた柿の木を念頭に浮かべる。つまり晩秋の句となる。ところがこの句は柿の花を配し、夏の夕景を描いた。実にユニークであり、それがまた成功している。「物思ひ」は、秋と春に限らないことを証明しているような句である。(水)

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