梅雨茸足の爪切る木のベンチ   横井 定利

梅雨茸足の爪切る木のベンチ   横井 定利 『季のことば』  梅雨晴れのほっとした気分をよく伝えている句である。四、五日降り込められていい加減くさくさしていたに違いない。ようやく降り止んで、薄日が差してきて、それがだんだん強く眩しいくらいになる。  近所からにわかに活発に動き回る物音が聞こえて来る。みんな待ちかねた晴れ間だけに、洗濯だ買物だと忙しい。しかしこちらは別に何の用事も無い。家人はとっくに出かけてたった一人。そうだ足の爪を切ろう。濡れ縁の先のタタキに置かれた木のベンチに腰をおろし、ヨッコラショと言いながら片足を乗せる。我ながらぶざまな恰好だが、別に誰かに見られるわけでもない。  ぱちんぷちんと剪るそばから爪はあちこちに飛ぶが、土にまぎれてしまう。庭木のいい肥やしになるかなんてバカなことをつぶやきながら、ふとベンチの脚を見て驚いた。なんと大きなキノコが生えているではないか。  黴も生えれば茸も生える、ほんに日本は雨の国、ぱちん、ぷちん・・・。(水)

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