父の日や無口息子のメール来る     高石 昌魚

父の日や無口息子のメール来る     高石 昌魚 『この一句』  大学の教員をしていた頃、学生が無口になった、ということが同僚の間で話題になった。話しかけても返事がない。分かったのか分からないのかも分からない。学内で出会い、ちょっとしたことを尋ねたら、硬直して聞いている。ところが「返事はメールでいいよ」と言うと劇的に変化するのだ。  パソコンにすぐ返事が返ってくる。そのうち、向こうから質問を寄せてきた。話を聞いたのか、別の学生も相談を持ちかけてくる。どうやら今の学生は目上の人と顔を合わせて話すのが苦手らしい。それを解決するのがメールなのだろうか。彼らはメールによって無口になった、という思いもある。  句の息子さんは立派な社会人で、別の世帯を持っておられるのだろう。父上には昔から無口だったそうである。しかし今年は父の日にメールが来た。「嬉しかったですね」と作者は言う。この句を見れば、メールも悪くない、と思わざるを得ない。全てメールでOK、とは決して言わないけれど…。(恂)

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