夏めきて水重くなる神田川       高橋ヲブラダ

夏めきて水重くなる神田川       高橋ヲブラダ 『この一句』  東京人にとって神田川のイメージは一定ではない。三鷹市の井の頭公園に発する上流部はかつて「神田上水」と呼ばれていたほどだから、清流とはいえないまでも、かなりきれいな印象がある。しかし中野区、新宿区と流れるに従って、都市河川の色合いを増し、不快感をもたらすようになる。  フォークソング「神田川」の影響もきわめて大きい。「二人で行った横丁の風呂屋」「三畳一間の小さな下宿」。あの頃の若者が大手町勤務のビジネスマンになり、昭和5、60年頃の思い出をそのまま引きずって、いまの神田川をのぞき込むと「こんな重たそうな水なのか」と毎回、がっくりくるのだ。  水がほとんど流れていない時がある。東京湾の上げ潮のためだろうか、逆流する時もあるし、異臭を発することもある。しかし「こんな川、ない方がいい」とは思う人は少ないらしい。先日、橋の上で「もう少しきれいになればなぁ」という声を聞いたばかりだ。みんなの心に生きる神田川なのである。(恂)

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