柿若葉力余って庭占拠   藤村 詠悟

柿若葉力余って庭占拠   藤村 詠悟 『この一句』  「若葉」は初夏五月にふさわしい季語で、これも五月の酔吟会に出された句である。ただ、六月初めの今日あたり、若葉青葉が急に勢いを増して、この句が言うように力が余って庭を占拠し始めたなあとつくづく感じるようになる。  ことに柿の木は勢い盛んである。葉が大きいから、木の手入れを怠ると四方に枝を広げ、狭い庭だと庭全体を暗くしてしまう。やや肉厚のつやつやした濃緑の葉が夏の太陽を照り返す様子は、生命力に溢れ、気圧されてしまうほどである。しかし、その木の下に入ると涼しく、フィトンチッドが漲っているようだ。  この句の作者は柿が大好きで、お嬢さんがその昔、富有柿を植えてくれたのだという。今は老夫婦二人住まいとなっているから、柿の木の剪定も思うに委せないのであろう。いつの間にか旺盛に繁ってしまった。それもまた良き哉。柿若葉から放たれる力で若返った気分になれると喜んでいる。(水)

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