花びらに風のかよへり白牡丹      高井 百子

花びらに風のかよへり白牡丹      高井 百子 『この一句』  風はもちろん、一個所だけに吹くものではない。牡丹を見る人の顔にも、庭や公園一帯にも過ぎていったはずである。しかしその風は非常に柔らかく、感覚的には無風と言えるほどの状態だったのだろう。作者は風を感じていない。しかし眼前の牡丹の花びらが、わずかに揺れるのを見逃さなかった。  牡丹の花びらに風がかよって行くという、ただそれだけのことだが、何とも繊細にして美しい瞬間を捉えたものである。花びら全体が揺れているのではない。先に行くほど薄い先端部だけが、かすかに動いているのだ。牡丹の色は紅でも黄でも赤紫でもなく、絶対に白でなければならない。  この「みんなの俳句」欄は、「水」氏と私が一週間置きに担当している。週に四句か五句だから年間、二人で二百三十句ほどを取り上げるだろう。作者はもちろんアマチュアばかりだが、中には名句、秀句、佳句と呼びたいものも登場してくる。では、この句は・・・、私は「名句である」と思っている。(恂)

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