職にありしごと大股に夏日影      横井 定利

職にありしごと大股に夏日影      横井 定利 『この一句』  夏日影は「日差しの当たらない場所」ではなく、「夏の日差し」のこと。日差しの当たる場所としてもいい。散歩だろうか、どこかに出かけるのか、作者が外へ出たのは初夏の晴れ渡った朝だった、と想像する。とても気持がいい。気が付くと、胸を張り、大股でずんずんと歩いているのだ。  こんな歩き方は最近、あまりしていなかった。しかし以前はいつも元気よく歩いて行ったものだ。いつ頃だっただろう。ああ、現役社員の頃だった、と思い出す。重要な仕事のある日は、挑戦する気分で大股に歩いて行った。前日の仕事の成功を、思い出しながら出勤する日も同様であった。  職を退いて十年ほど、少しずつ歩幅が狭まってきた。街のショーウインドに映った自分の猫背にがっかりしたこともある。しかし今朝は違う。初夏の日差しを浴びて、やる気が全身に漲ってきた。俺はまだ老いていない――。私(筆者)はこの句に非常な共感を覚える。作者と同年配だからだろう。(恂)

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