夕干潟白鷺一羽ひそと立つ     竹居 照芳

夕干潟白鷺一羽ひそと立つ     竹居 照芳 『この一句』  夕暮れ迫る干潟である。潮干狩りの人たちはもう帰ってしまった。一羽の白鷺が上げ潮を感じ取ったか、帰巣の時が来たのか、薄暗い干潟からふわりと飛び立ったのだ。なかなか印象的な風景である。夕干潟は重厚な雰囲気を持つ舞台であり、飛立つ鳥は大きめの真白な鳥でなくては、と思う。  この句、実は「季重なり」であった。「干潟」は潮干や潮干狩と同グループの春の季語であり、「白鷺」は夏の季語なのだ。季重なりは好ましくないとされるが、現今は禁じ手のように見る傾向もあるだけに、どちらか一方の語を別の語に変えたらどうか、という指摘を受けるかも知れない。  そんなわけで私も季重なりは避けた方がいい、と考えた。ところがこの句の、どちらの語を変えてみても、うまくいかなかった。句の魅力は夕干潟と白鷺によって醸される独特のムードにあるようで、一方を変えると魅力の大半が消えてしまうのだ。この句、季重なりの成功例と言えるのではないか。(恂)

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