口紅を控へ目にして花衣   高橋 楓子

口紅を控へ目にして花衣   高橋 楓子 『季のことば』  四月十九日に行われたNPO法人双牛舎第六回俳句大会で見事「天」に輝いた句である。なるほどなあと唸り、女でなくちゃ詠めない句だなあと思う。  「花衣(はなごろも)」とは花見に出かける時に女性が着る華やかな衣装を言うのだが、そもそもは平安時代の宮廷女性の十二単を構成する袿(うちき・うちぎ)から出ている。袿は非常に薄い絹布の袷で、色の異なる表地と裏地を重ねた。色の組合わせである「襲の色目(かさねのいろめ)」の一つに表が白、裏が蘇芳(すおう=濃い紅色)の「桜襲(さくらがさね)」というのがあり、その袿を花衣と言った。恐らく裏地の紅色が白の表地を透かしてほんのり桜色に見えるのだろう、春の装いの定番となり、そこから花見の宴などに着る着物を「花衣」と呼ぶようになり、時代が下って元禄時代になると派手な柄の花見衣装全般を指すようになった。  今では「花衣」は花時の女性のお洒落着を幅広く指すようになり、晩春の気分をうたう季語としてよく用いられる。この句などもそうだ。それにしても、口紅を控えめにしてとは心憎い。男どもの心をしっかりと掴んだ。(水)

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