土筆伸ぶ塩田平は粉糠雨   高井 百子

土筆伸ぶ塩田平は粉糠雨   高井 百子 『季のことば』  「土筆(つくし)」はのどかな春の田園を象徴する植物として古来親しまれてきた。河原、田畑、荒れ地、どこにでも生えて来る鮮やかな緑のスギナ(杉菜)というシダ植物があるが、ツクシはその胞子茎。スギナの芽生えは四月だが、ツクシはそれより早く三月からぴょこぴょこ生えて来る。  川の土手がようやく緑がかって来たなと思う頃、ツクシが出始める。大人も子どもも大喜びで摘む。長いこと日本の春の風物詩だったのに、都会周辺はコンクリート堤防や住宅地の密集で、土筆の生える余地が無くなってしまった。  しかし、信州の鎌倉と言われ、「日本の歩きたくなる道500選」に入る塩田平にはまだ盛んに生えている。年間降水量900ミリと日本有数の雨の少ない土地故に、至る所に潅漑用の溜め池があり、それがまた独特ののんびりした田園風景を作る。句会では「土筆と塩田平、そこへ降っているのかどうか分からないような小ぬか雨。この描写が、この里の雰囲気をよく表しています」(大虫)という評があった。確かにその通り、「土筆伸ぶ」と「粉糠雨」で塩田平へ行ったことのない人にものんびりした感じが伝わって来るだろう。(水)

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