花すみれ残して墓の草を引く 田中 頼子
花すみれ残して墓の草を引く 田中 頼子
『合評会から』(日経俳句会)
水牛 優しい感じの句ですね。
ヲブラダ こんなさりげないところを、よく見ているなと・・・。
冷峰 墓の周りの草から、花すみれだけを残しておいたのですが、私は抜かれた草のことも考えましてね。それらの草の思いも酌んで選びました。
臣弘 亡くなった故人への思慕が感じられる。それがすみれを残すという形になっているのでしょう。故人への思い出は引き抜けない。うまいなあと思います。
水牛 すみれは残しておいてあげましょう、ということですな。
操 雑草を取り掃き清められた墓に、楚々として可憐なすみれの花。爽やかさが伝わってきます。
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すみれは生命力の強い野草である。小さな庭にも、ブロック塀の下も、もちろん墓の周りにも自然に芽を出し、花を咲かせる。春になると供華のない墓の周りにもすみれが咲き、故人を慰めてくれる。(恂)