春の草放浪癖がむっくりと   杉山 智宥

春の草放浪癖がむっくりと   杉山 智宥 『季のことば』  「若草」という季語が萌え出た早々の初々しい香り立つ草を言うのに対して、「春の草」は萌え始めの草も言うが、むしろ春もやや深まり、緑色が少し濃くなって、ある程度伸びた時期のものを指すことが多い。思わずごろんと寝っ転がりたくなるくらいに生えそろった頃合いである。  というわけで、この句を句会で見た時には、「『若草や』とした方がいいのにな」と首をひねった。しかし後でじっくり吟味した結果、やはり「春の草」がいいようだと思い直した。  なぜ最初に「若草や」とした方が良いと思ったのか。それはまず句形がきっちり定まるから。そして、「小諸なる古城のほとり」をはじめ、昔から「放浪癖がむっくりと」頭をもたげるのはまだ生えそろわない若草の頃ではなかろうか、と思ったからであった。  しかしこれは固定観念に毒された思い込みだったようだ。風の冷たい早春では、何の目当てもなく外に出る気分にはなかなかならない。緑が目立ち、吹く風もそよそよとなってこそ、遊びごころがふわふわと湧いて来る。(水)

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