菜の花を茹でたる水の青さかな   星川 佳子

菜の花を茹でたる水の青さかな   星川 佳子 『季のことば』  菜の花は晩春の季語で俳諧の時代から読み継がれてきて名句が多い。だがそれ等はほとんどが菜の花畑の景色や、咲いている菜の花を取り合わせた叙情句である。ところがこの句は「食べる菜の花」を詠んでいる。菜花は昔から食べられてはいたが、あまり一般的ではなかった。今ではビニールハウスで栽培、早春から大量に出荷されてスーパーやコンビニにも出回るようになった。鑑賞用の菜の花も出荷時期はどんどん早まり、二月初めから出回る。今や菜の花は晩春ではなく「三春の季語」とした方がいいようだ。  「お浸し」にせよ辛子和えなどの「和えもの」にせよ、菜の花は花の黄色と葉の青さが命である。のんびり茹でたりしたら色は吹っ飛んでしまう。さっと茹で上げたらすぐさま冷水に取る。そうすると鮮やかな色が際立ち、食膳に供した時にいかにも「春の一品」という感じがする。  この句は対象を実によく捉え、表現している。菜の花は茹でると水が蒼くなるほど色が出る。それを冷水に放つとぱっと緑が浮かぶ。作者はその時、「春だな」と感じたのだ。(水)

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