灸もせで歩数伸びたり冬うらら   高瀬 大虫

灸もせで歩数伸びたり冬うらら   高瀬 大虫 『季のことば』  冬なのに穏やかな日和で、空は晴れて暖かい。まるで麗らかな春の日を先取りしたようだ、という喜びを表す季語が「冬うらら」。少し気取って「冬麗(とうれい)」とも言う。  この句は芭蕉と曾良の歩いた奥の細道を逆に回ってみようという「逆回り奥の細道」の仕上げの旅として、一月末、草加松原から千住、深川を巡り歩いた時に生まれた。もちろん途中は電車に乗ったから、それほど歩いた感じはしなかったのだが、夕刻、打上げ会場に腰を据えて万歩計を見たら二万一千歩になっていた。割に暖かい日であったとは言え、大寒の一日を落伍者も無く、よく歩き通した。「灸もせで」というのが古めかしくて面白い。  ところでこの句、そんな楽屋話は知らなくても、ごく一般的な冬麗の日のハイキングの句としても十分成立する。老夫婦が思い立ってのウオーキング、意外にスムーズに歩き終えての憩いのひととき。そんな場面も描ける。むしろ、そんな風にとった方がいい句のように思える。(水)

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