湯豆腐や傘寿の人の陽気酒   徳永 正裕

湯豆腐や傘寿の人の陽気酒   徳永 正裕 『季のことば』  冬は何と言っても湯豆腐。料理とも言えない料理だが、気持も身体も温まる。これも新春川越七福神吟行で生まれた句。  七福神を詣で終えて、川越の老舗鰻屋で懇親会を開いたのだが、鰻が出るまでのあれこれの料理の中に、湯豆腐が出て来た。まずまずの吟行日和だったとはいえ、やはり寒の入りの真冬を4時間以上歩いたのだから、身体は冷え切っている。小鍋からふわーっと上がる湯気に一同ほっとして、座が和んだ。  一行の最長老涸魚さんは今年傘寿。足取り確かに二万歩をすいすい踏破して、すっかり御機嫌。実に美味そうに熱燗を呑んだ。かかりつけの医師からは酒量制限を厳しく言われているようだが、今夜ばかりは自ら縛めを解いて気分良く呑んでいる。「陽気酒」という造語が場の雰囲気と涸魚さんの人柄をよく表している。単なる挨拶句の域を越えて、読む人の気持まで温めるような力を持っている。(水)

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