うつぶせる古代の武人枯葎            田中 頼子

うつぶせる古代の武人枯葎            田中 頼子 『この一句』  この句、「何だろう」と思うか、「アレだな」と気づくどうか。ゆっくり考えれば低いハードルなのだが、句会で百数十の句から選んでいた時は「埴輪なのかな」などと考え、見過ごしてしまった。その後に榛名山噴火の火山灰、火砕流に飲み込まれた「鉄製の甲冑を着た武人」に違いない、と気づいた。  一昨年、群馬県渋川の国道建設現場で発見された。その後に調査が続き、さまざまな報告が今も伝えられている。古墳時代の鎧(甲)を実際に着た人物の出土は全国で初めてだという。句の作者に確かめたところ「皆を逃がそうとして指揮していたのか、などと勝手に想像していた」そうである。  インターネットで調べてみた。武人の脇から乳児の頭骨も発見されていた。複数の学者が「赤子を抱いて逃げる途中だったのでは」と推測している。やがて土が積もり、春に草が生え、冬には武人の上を枯葎(かれむぐら)が覆っていたのだろう。かくして千五百年、彼はうつぶせのままであった。(恂)

続きを読む