うたた寝の大ぐい呑みに去年の酒      大澤 水牛

うたた寝の大ぐい呑みに去年の酒      大澤 水牛 『季のことば』  手元にある大判・五分冊の歳時記によると、広く知られている「去年今年(こぞことし)」は、「去年」の傍題として最後に載っていた。三十年ほど前の出版だから、それほど昔ではないのだが、その後に「去年今年」が存在感を増して独立、今では「今年」と「去年」を傍題として従えるようになっている。  立場の逆転が起きたのは何と言っても「去年今年貫く棒の如きもの」(虚子)のパワーによるものだろう。この句は戦後間もなく、川端康成が称賛したことによって有名になり、年末、年始には必ずマスコミが必ず紹介するほどになった。もはや一般常識的レベルの季語、と言えるのではないだろうか。  一方、「今年」や「去年」は季語としてめっきり影が薄くなったが、実力を失ったわけではない。例えば上掲の句。大晦日の夜、大ぶりのぐい呑みでやっていて、うたた寝をした。はっと気づけば、もう新年、というわけである。「去年」はつまり、「去年今年」を包含する季語なのであった。(恂)

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