へた虫に耐えたる富有柿三つ         藤村 詠悟

へた虫に耐えたる富有柿三つ         藤村 詠悟 『季のことば』  あの家、この家に、柿の実が美しく輝く季節になった。東京あたりだと、自宅の庭で簡単に作れる果物は柿くらいのものだから、柿主にとって待望の時期だろう。ところが柿の実り方には大きな差があり、枝もたわわに鈴生りの家があると思えば、わずかに数個だけという残念な家もある。  不作はヘタ虫(カキミガの幼虫)の仕業に違いない。このウジのような虫は初夏に発生して小さな青い実を落とし、晩夏に発生したものが大きな実に取りつくという。色づいた実の中で早めに真赤になった実を取ると、ヘタと果肉の間に虫が食いこんでいて、柿好きをがっかりさせてしまうのだ。  作者は毎年、柿が実るのを楽しみにしているそうだが、今年は僅かに三つ。これからは鴉など柿好きの鳥と、「いつ採るか」を探り合う時期だという。ヘタ虫の駆除はかなり難しいようで、柿の出来は結局、自然にまかす人が多いらしい。僅か三つでも、それが無農薬柿という宝物なのである。(恂)

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