どれくらい生きたか忘れ蚯蚓鳴く       佐々木 碩

どれくらい生きたか忘れ蚯蚓鳴く       佐々木 碩 『この一句』  テレビに出ている人の年齢を見て「私と同い年だ」と思い、しばらくして、「俺は十歳も年上だった」と気づいたことがあった。若いつもりでいたのではない。瞬間的に年齢を失念してしまったのだ。作者も同じなのだろうか。いや、生きた期間を忘れているのは蚯蚓(みみず)の方かも知れない。  俳句は自分の意図をはっきりと相手に伝えるように作るのが本道だと思う。しかしこの句の「作者か、蚯蚓か」のように、意味不明のために不思議な魅力を生む場合がある。仙人が「私は何歳かな」と呟く。それを聞いた蚯蚓が「私も年を忘れてしまった」と答える。そんな場面さえ考えてしまうのだ。 「蚯蚓鳴く」のような奇妙な題材で、大勢の人が一斉に作品(句)を作るというのが、俳句と言う文芸の面白さの一つ、と言えるだろう。何だいこれは? と考えているうちに、作者と自分の思考がからまって、意外な面白さが醸されたりするのだ。そんな作り方を試みている人もいるらしい。(恂)

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